ポールのカナリア 1

アニー・シェラード
~My Bible First より~

ポールとお母さんは古い長屋に住んでいて、そこは、他にもたくさんの人が住んでいました。

ポールのお父さんは亡くなってしまい、お母さんは、毎日けんめいに働いて、
食べ物や、部屋の借り賃を払うためのお金をかせいでいました。

ポールも、何か仕事をして、お母さんを助けたいと思っていました。
けれどポールは足が不自由だったのです。
生まれてから、いちども歩いたことがありませんでした。

ある寒い、雨のふる日、ポールはいすにすわって、
部屋にひとつしかない窓から外をながめていました。

窓から見えるのは、となりにある高い建物の壁だけです。

ポールの住んでいた長屋とその建物の間には、緑の草も、木も、花もありませんでした。
そこには、ゴミと古い箱がつまれた、せまい裏通りがあるだけでした。

とつぜん、風が強くなり、雨が窓をはげしく打ちつけたので、
ポールは外を見ることができなくなりました。

窓のそばの壁は、しっくいがはがれ落ちて、その下にある板が見えていました。
その板は雨でぬれてくるし、まどのすき間からも、水が入ってきました。

ポールはとてもさびしく、みじめな気持になりました。
目には涙があふれてきました。

「ぼくはだめな人間だ」と、ひとりごとを言いました。

「ぼくみたいな役立たずは、他にいないはずだ。
ぼくなんか、生まれてこなければよかったのではないだろうか」。

でもすぐに、お母さんのことが頭にうかび、そのように考えるのはやめました。

なぜならお母さんは、仕事から帰ってきてポールの顔を見ると、
いつでも喜びの笑顔を浮かべ、彼を強くだきしめてくれるのです。

強い風で、窓がガタガタ鳴り、となりの部屋では、ブラインドもカタカタ音を立てています。
しばらく嵐を見ていたポールは怖くなり、目をそらそうとしました。
しかしすぐに、また彼の目は、外の何かにくぎづけになりました。

窓台のはしに、何かがいます。
小さな鳥のように見えます。
そう、それはまぎれもなく、一羽の鳥でした。
窓のたなに、しがみついていたのです。

ポールは、「まあ、かわいそうな小鳥さん、ぼくが助けてあげるからね」と話しかけました。
それから窓をあけ、そっと手を伸ばしました。
つっかい棒がないと、窓はすぐに落ちてきて、閉じてしまいます。
その窓が、彼の肩に重くのしかかります。ポールは肩の痛みをこらえながら、夢中で小鳥を助けようとしました。

はじめ、小鳥は吹き飛ばされそうになっていましたが、
風向きが変わり、風に押されて、家の中に飛びこんできました。

窓を閉めるとすぐに、ポールはずぶぬれになった小鳥をひろいあげ、
その羽を優しくふいてあげました。

小鳥は、しばらく手の中でじっと横たわっていました。
息もしていないように見えました。
それからゆっくりと起きあがりましたが、寒さでぶるぶる震えていました。
そこでポールは、まず毛布で自分自身をくるみ、小鳥を毛布の中で抱いてあげました。

暖かい腕と毛布の中で、小鳥はすぐに眠ってしまいました。
すやすや眠っている小鳥を見ていると、ポールはとても幸せな気持ちになりました。

そしてしばらくすると、彼も眠ってしまったのでした。

(続く)

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